捜査機関の取調べについて(否認事件)

後に真犯人が見つかるような冤罪事件の被疑者でも、警察官の取り調べで、自白してしまう人は少なくありません。

古くは袴田事件、近年では、明治大学の学生が、インターネットの遠隔操作の事件で、虚偽の自白をさせられてしまったケースなどがあります。

捜査官は、「被疑者に騙されてはいけない」という強い意識を持って取調べに臨むので、犯行を否認している被疑者=嘘つきと考えています。だから、犯行を認めていない被疑者に対しては、真実が何なのかを知りたいという視点ではなく、なんとしてでも嘘を見破って自白させてやるということに重点が置かれてしまいます。(まあ、警察は、有罪だと思っているから逮捕しているわけなので当たり前かもしれませんが)。

否認事件の取り調べでは、暴力を振るわれることはなくても、強い口調で攻め立てられたり、事件とは無関係に人格を非難されたり、自分の両親の人格まで否定されることもあります。

また、捜査官は、被疑者が自分の行動を説明しても、「なんで?」「なんで?」さらに突っ込みを入れるような取り調べが行われることが多いです。人間だれしも、常に合理的な行動をとっているわけではありませんが、「普通こうだよね。君の説明していることは合理的じゃないよね。」「ふつうはこういう行動をとるよね。君の説明している行動は合理的じゃないよね」と強い口調で攻めたてられます。そうすると、被疑者としても、確かに、普通はこうだよな、とパニックになることも多く、その通りかもしれませんね、と捜査官の描いた合理的なストーリーを認めてしまう人もいます。

また、あまりにも取調べが過酷なので、精神的に疲れてしまって、早く取調べを終わらせるために自白する人もいます。後日、裁判官に正直に話せばわかってくれると考えている人もいるようですが、裁判官は神様ではありません。虚偽の自白をした際、暴力が振るわれたなどの客観的証拠や、明らかに自白が客観的証拠と矛盾するなどの事情がない限り、虚偽の自白をそのまま真実として取り扱うことになるでしょう。

このような虚偽の自白を防ぐためには、違法な捜査を許さないということと、被疑者の精神力が大切です。

そのためには、家族の支援と、弁護士による頻繁な接見(精神的に励ますとともに、違法な取り調べが行われていないか確認)が必要不可欠です。