債権回収の手段としての内容証明郵便

 ご相談にいらっしゃる中小企業の経営者の中に、最初から、「内容証明郵便をお願いします。」という人は、少なくありません。

 しかし、「内容証明郵便」の効果を検討した上で、「内容証明郵便をお願いします。」という方は、多くありません。

 では、内容証明郵便には、どういう効果があるのでしょうか。

 

まず、債権回収において、内容証明郵便を送付した者のみに、有利な効果を認める法律は存在しません。

内容証明郵便は、公文書ではなく、公権力がお墨付きを与えてくれる書類でもなく、ただ単に、郵便局が「この人は、あの人に、こんな内容の手紙を送りました。」ということを証明してくれる手紙にすぎません

 

では、何故、債権回収のときに、内容証明郵便と言う手段がとられるのでしょうか

 

まず、内容証明郵便には、心理的か効果があります。

 

電話にも出てくれなかった相手方が「弁護士から内容証明郵便が来た」ということに委縮して、お金を払ってくることは、たまにあります。また、裁判になれば、自分がまけてしまうに違いないと思い込んでしまう人もいるかもしれません。

 

次に、内容証明で代金の支払いを請求すると、請求書を送った、送ってないでトラブルになるのを防ぐことができます(郵便局が証明してくれるわけですからね)。

 

では、請求書を送ったというを証明しなければならない場合とは、どういう場合でしょうか

 

民法上は、裁判上の請求をすれば時効はストップ(リセット)しますが、裁判所を通さずに、自分たちで「支払ってね」という請求書を送付しただけでも(これを「催告」と言います)、最大でも半年時効を伸ばすことができます(民法153条「催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事審判法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。」)。

債権回収においては、内容証明郵便には、時効をストップさせる証拠になるという意味がありますよね。

まあ、裁判まで考えている債権者の方は、時効ギリギリまで待たないでしょうから、一番重要な効果は相手方に対する心理的圧迫ということになるでしょう。

 しかし、相談をしていて、内容証明郵便を送っても意味がないだろうなと思うケースも多々あります。

 例えば、相手方が借金に慣れていて、内容証明郵便の効果を知っていて、内容証明郵便に慣れっこになっている場合や、既に、弁護士に相談しているだろうなと思われるケースなど、内容証明郵便を送っても意味がないでしょう。

 内容証明郵便が効果的かどうかは、一度、弁護士と相談してみるといいと思います。

 なお、当事務所では、債権回収にも力を入れており、簡易なマニュアルを作成しています。もし、マニュアルをご希望される経営者の方がいれば、ぜひ、ご連絡ください。