相手が財産を開示しないケースについて(離婚)

神戸家裁

今月は神戸でも雪が少し積もりましたが、少しずつ暖かくなってきている気がします

今日は離婚裁判における財産分与のうち預貯金通帳の開示に関する話をさせていただきます

離婚裁判の財産分与においては、まず、それぞれの当事者が自分で管理している財産を任意で開示します。

もし、相手方が預貯金通帳を任意で開示しないときや隠している可能性があるときには、調査嘱託(裁判所を介して第三者機関に情報を開示させる制度)というものをして調査することになります。

調査嘱託という制度があるため、弁護士が選任されている場合は、無駄な抵抗はせず、自分で財産を任意開示することがほとんどだと思います。

ほとんどの金融機関は調査嘱託に応じて情報を開示してくれるのですが、ごく稀に、本人の同意がなければ情報を開示してくれないところもあります。

ここ2,3年で私が経験したケースでは、本人が拒絶していることを理由に、三井住友銀行から取引履歴・残高の開示を拒絶されたことが複数回ありました。但し、三井住友銀行からは、どこの支店に口座を保有しているかは回答してもらえました。

裁判所や(相手方の)弁護士の説得などもあり、預金残高の開示を最後まで拒否されたケースは1件だけでした。その1件については、最後まで、預金残高が不明のままでした。

 

では、預金残高が不明の場合、財産分与はどうなるのでしょうか。

 

当事者の一方が正当な理由なく財産の開示に応じないときには、一般的には「他方当事者が主張する合理的な額を対象財産として認定できる」と言われています。その認定した金額をもとに財産分与をすることになります

しかし、「合理的な額」の主張・立証は結構ハードルが高いような気がします。

私は、年齢や役職に応じた相手方職業の平均年収の資料、総務省が作成している統計に記載されている平均的な支出金額に基づき、推定される預金残高を計算して主張したことがあります。しかし、裁判所は「標準的な統計上の支出金額に基づき推定計算されたものであり、本件にこれが実際に当てはまるか明らかでない」という理由で認めてくれませんでした。

 

もっとも、裁判所は、相手方の預金口座には財産分与を認める必要がない程度の預金が存在すると思われ、さらに、財産分与を求めておきながら自ら開示を拒否することは信義則に違反するとして、相手方からの財産分与請求は認めませんでした。

 

裁判所が「相手方の預金口座には財産分与を認める必要がない程度の預金が存在すると思われ」ると認定した具体的な根拠は記載されていませんでしたが、おそらく私の主張した推定計算を参考に上記判断に至ったのではないかと思います。一方、裁判所としては、推定計算に基づき、相手方に対して財産分与として一定金額を払えという判断をすることにもためらいがあったのではないかと思います。

 

本件では、推定計算及び推定計算の根拠となる資料を提出すること多額の財産分与を免れることができたことは、依頼人にとって多大なメリットがあったのではないかと思います。

 

リライト神戸法律事務所では、離婚・男女問題に力を入れて取り組んでいます。お悩みの方は、是非、当事務所にご相談ください。