不貞相手に離婚慰謝料を請求できない 最高裁判決

不貞相手に離婚慰謝料を請求していた事件について、本日、最高裁判決が出ました

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190219-00000119-kyodonews-soci

簡単な事案の内容は、

XさんとAさんは夫婦で二人の子供がいた

Aさんは、平成21年6月以降、勤務先の上司Yと不倫するようになった

Xさんは、平成22年5月頃、AとYの不倫を知った。そして、AとYは不倫解消して、XAは同居を続けた

平成26年4月、Aさん、長女が大学進学したのを機に、Xさんと別居。

Xさん、平成26年11月、離婚調停申立て、翌年2月25日、離婚調停成立

そして、Xさんは、Yさんに対して、XAが離婚に至ったのは、YAの不倫が原因だから、離婚慰謝料を支払えと請求した。

第1審、第2審は離婚慰謝料の支払いを認めた。

Yさんは、離婚慰謝料を認めるべきではないと上告した

と言う内容かと思います

まず、最高裁判決の解説に入る前に、一般的な説明をさせていただきます

一般的に、不倫に対する慰謝料請求には、(ⅰ)不倫に対する慰謝料請求、(ⅱ)不倫によって夫婦関係が破綻したことに対する慰謝料請求(離婚慰謝料)というものが考えられます。

(ⅰ)は不倫に対する慰謝料ということで、基本的には、夫婦関係が破綻していない場合の慰謝料と思ってください。だいたい相場は、100万円くらいかなと言うところです。そして、時効は、不倫が解消されたとき、もしくは、不倫の事実を知ったとき(相手の特定まで必要)から3年となります。

(ⅱ)離婚した時に請求する慰謝料で、不倫されたことに対する精神的苦痛と、夫婦関係が破綻したことに対する精神的苦痛を慰謝するという二つの側面があるので、慰謝料額は、(ⅰ)よりも高額で、だいたい相場は150万円~250万円くらいかなと言うところです(ただし、夫婦関係の長さ、不貞の態様等で加増されることはあります)。時効については、離婚した時から3年と言われていました。

本件では、不倫が解消されてから、離婚するまでの期間、XがYに対して訴訟を提起するまでの期間が3年をはるかに超えていたことから、①離婚の原因が本当に不倫なのか(因果関係)、②仮に、離婚の原因が不倫であったとしても、3年以上経過しているのだから時効により、慰謝料請求権が消滅しているのではないかという、二つの争点が考えられていました。

なお、本件では、YA間の不倫が解消されたのは、3年以上前の話なので、時効の問題から、Xとしては、(ⅱ)の離婚慰謝料で請求するしかない方法はありませんでした。

統計を取ったわけではなく、あくまでも私見ではありますが、不倫が解消された時点から離婚するまでに期間が空きすぎている場合、(ⅱ)の離婚慰謝料が認められたり、単に離婚と不倫との間に因果関係がないということで請求を棄却されたりと、判断がまちまちであったような気がします。

また、不倫解消・判明した時期と慰謝料請求までの期間がさほど空いていない場合(時効の期間内)の場合には、離婚慰謝料を請求すれば、原則として、(ⅱ)の離婚慰謝料が認められていました。

そして、本日、最高裁は、協議離婚であっても裁判離婚であっても、離婚は夫婦の間で解決する問題であるから、不倫相手が夫婦関係を壊すことを意図して積極的に夫婦関係に干渉するなどして離婚に至らしめたと評価できるような特別な事情がない限り、(ⅰ)の不倫慰謝料は請求できるけれど、(ⅱ)の離婚慰謝料までは請求できませんよ、という基準を示しました。

時効については判断していないということですね。

本件は、(ⅰ)の不倫慰謝料は時効を経過しているので、おそらくXさんは離婚慰謝料しか請求していなかったと思うので、裁判の対象は、離婚慰謝料のみとなるものと思います。そして、裁判所は、上記基準で示したような、特別な事情は見当たらないから、離婚慰謝料は請求できません、と判断したことになります。

いずれにしても、本件では、不倫と離婚の因果関係の判断については、全ての事情を丁寧に考慮して因果関係を判断する必要があったと思います

気になるのは、最高裁が、離婚慰謝料を認める基準として、不倫相手が夫婦生活に不当に干渉するなどして離婚に至らしめたと評価できるような特別な事情まで要求しているところですね。

そもそも、Xさんにとっては不意打ち的な判断ではなかったのかなと言う点も気になります。原審までで、特に大きな争点とはなっていなくて、主張立証する機会があったのかなとも思いますが、原審の判決を読んでいないので、何とも言えないですね(原審までの因果関係の主張立証で、全ての事実がでていることもありますしね)。

最高裁の要求する基準は、今後の実務に大きな影響を及ぼすのではないかと思います。

私見ではありますが、不倫をするということは、当然、不倫相手の夫婦関係を破たんさせる危険な行為であるということは容易に理解できると思います。不倫が夫婦関係を破たんに至らしめる可能性が高いということは容易に理解できるにもかかわらず、離婚慰謝料が認められるために、特別な事情まで求めるのは違和感があります。不倫相手が不当な干渉をしたか場合は、不法行為の悪質性が高いという場合で慰謝料を増額で調整すればよいのではないかと思います。