介護事故 介護付き老人ホームでの自力歩行中の転倒事故

本日は、介護付き老人ホームに体験入居中の人が自力歩行中に転倒した介護事故について、解説させていただきます

簡単な事実関係

80歳代のAさんは、介護付き老人ホームに体験入居していました。

入居の際、Aさんの子どもは、アンケートに、Aさんが要介護2の認定を受けていること、日常生活動作には「一部介助」が必要であるところ、具体的には着脱衣に「一部半身介助」が必要であること、食事は「自立」していること、移動は「時間を要するが自立」していることを記載して施設に提出しました。また、入居の際、Aさん及びその親族は、Aさんの歩行が不安定であること、転倒の危険性があることを伝えていなかった。また、Aさんを紹介した病院からも転倒の危険性について説明は受けていなかった。

平成21年8月28日、施設の従業員がAさんに食事の準備ができたことを告げ、Aさんが自分の部屋から出たところで転倒して、Aさんは右大腿骨骨折の傷害を負った。施設の従業員は、Aさんの部屋から離れていた。

なお、入居から本件事故までの間、Aさんが転倒したことはなかった。

Aさんは、施設に対して損害賠償請求を提起した

裁判所の判断

本件の争点は、施設側において、Aさんの歩行が不安定であり、Aさんが転倒することが予見可能であったか否かであったところ、

Aさん及びその親族から転倒の危険があるとの指摘を受けていないこと

施設に入居する前に入院していた病院からも転倒の危険があるとの情報を受けていないこと

事故が発生するまで介護なしで自由に歩行して、転倒していなかった

ことなどを理由に、施設側にAさんが転倒することについて予見可能性がなかったと判断しました。

雑感

本件では、施設側にAさんの転倒について予見可能性がないとして、損害賠償請求が棄却されました

高齢者なので、足腰はどんどん弱くなっていくことが予想されます。

そのため、入居者について、当初は、自力歩行が可能であっても、自力歩行を疑わせる事情があれば予見可能性ありという結論になるのではないでしょうか

また、当然ではありますが、入居者の歩行速度などにも留意して、決して、急がせるようなことがないように配慮する必要があると思います

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