全ての財産をあげるつもりだった長男が自分より先に亡くなった場合、遺言の効力はどうなるの?

遺言の相談では、「家(家系)」と言うものをとても大切に考えているという人もたくさんいます。

どういうことかと言うと、先祖代々続いてきた「○○家」(土地などの資産を含め)を後世にも残したいといことです

昔から、「たわけ」という言葉があります。

「田分」すなわち相続などで、子どもに財産を分配していく者は、相続を繰り返すことにより、一族としての財産が減少してしまい、家は没落するにきまっている、だから相続で資産を分割するものはバカだということで、愚か者を表す言葉として「たわけ者」と言うことがが用いられたようですね。

やはり、「家(家系)」を大切に考える人は、長男なり跡取りに、財産を集中させて残したいと考えることが多いのです

となると、法定相続分とおりに遺産分割されたのでは、跡取りに財産を集中させることはできないので、遺言を作成する必要があります。

さて、ここからが本題になります

遺言者は、跡取りである長男に財産を残したいと考えています。その長男には、子どもAがいるとします。また、遺言者には、長男以外にも子どもがいるとします。

遺言者は、「長男にすべての財産を相続させる」と言う内容の遺言書を作成しました。

次に、遺言者より先に、長男が亡くなり、次に、遺言者が亡くなったとします。

では、Aは、遺言書があるから、遺言者の財産はすべて私の物だと主張することができるでしょうか(遺留分の話は除く)。

結論からすると、ただ単に「長男にすべての財産を相続させる」と言う簡単な内容しか記載されていない遺言書では、Aさんは遺産はすべて自分の物だとは主張しても認められず、法定相続分に従った遺産しかもらえないことになります(他の法定相続人がAさんにすべてあげると言えば別ですが)。

もし、長男が先に亡くなった場合に、Aさんにすべて相続させたいと思っていたのであれば、遺言書の中に、仮に遺言者よりも先に長男が亡くなっていた場合には、Aさんにすべての財産を相続させる」という文言を記載しておく必要がありました。

ご自身で作成された遺言書を拝見させていただくことが多々ありますが、法的に効力のない内容になっていたり、必ずしも、自分の希望通りの相続関係になるような記載になっていないことが珍しくありません。遺言書を作成するのであれば、必ず、一度、弁護士にご相談ください。